理事長所信

2018年度 一般社団法人 三原青年会議所 理事長所信

Create Our Future

~意志と情熱は、すべての原動力となる~

 

第57代理事長 田中 亮介

 
意志と情熱は、すべての原動力となる
私たちは青年としての責任を自覚し、明るい豊かな社会実現のため、意志と情熱を持って、新しい時代を切り拓かなければならない。
未来は予測して待つものではない。私たちの未来は私たちが創るのだ。
 

はじめに

 永禄10年(1567年)、沼田の新高山城を居城としていた小早川隆景公は、沼田川河口のある三原の湾内に、現在の三原城の元となる拠点を築いた。これが私たちが住み暮らす三原市の原点と言われている。なぜ隆景公は急峻で要塞としての機能を果たしていた新高山城に加えて、海辺に新たな城の整備を命じたのであろうか。
 小早川隆景公は戦国有数の知将と言われている。隆景公が優れていた点として、信義あふれる人柄や智略などが挙げられることが多い。しかし私は隆景公が智将たる所以とは、明確なビジョンを持ち、意志と情熱で新たな時代を切り拓いてきたことにあると考えている。山城がスタンダードであった当時において、隆景公はいち早く海を支配することの重要性を感じていた。当時この地が碇の生産地として、貿易の拠点である港湾都市となりつつあったという商業的な要因に加えて、水軍の拠点として瀬戸内海沿岸を支配し、内海の水運を広域的に統制するという軍事的な目的を合わせ、自らが思い描く三原を創り上げていったのである。
 
「新たな価値の創造には困難がつきものである」
 
 まだ誰も登ったことのない山を登ることは大変な困難を伴う。しかし誰かが勇気を出して進まなければそのあとに道ができることはない。今私たちが暮らすこのまちの歴史とは、先人達の挑戦と創造の歴史でもある。もちろん多くの失敗もあったであろう。しかしそれは成功への糧となり、次なる挑戦への情熱となる。
 今こそこのまちのために勇気ある一歩を踏み出そうではないか。先人達によって連綿と受け継がれたこのまちに、素晴らしい歴史の1ページを加えることは私たち若者の使命であるのだから。
 

サスティナブル(持続可能)なまちづくり活動を目指して

 近年、サスティナブル(持続可能)という言葉が注目を集めています。もともとは環境用語として使われていましたが、将来に渡って環境を保持し、未来の世代の利益を損なわ ないという視点が斬新であると注目され、様々な分野に広がってきています。私たちが目指す「明るい豊かな社会」の実現のためにもこの視点が不可欠であると考えます。三原市は昨年、三原城築城450年という節目の年を迎えました。準備期間も含めて三原市の魅力を発信する取り組みが多く行なわれ、私たち三原青年会議所もその活動に参画してまいりました。築城450年事業の期間は終了しましたが、私たちのまちづくり活動に終わりはありません。せっかく生み出された機運を萎ませないためにも、そしてこのまちを未来 へつなぐためにも、私たちは再び歩み始めなければなりません。
 真の地域活性化は、持続可能なまちづくり活動によって達成されます。ビジョンのない事業はすぐに飽きられてしまいますし、ただ楽しいだけのイベントも地域を活性化させるほどの影響力を持ちません。地域を活性化しうる鍵となる資源は私たちの周りに溢れています。築城450年事業をきっかけに顕在化したそれらの資源を今後さらに磨き、光らせることにより、地域にイノベーションを起こし、新たな価値を創造してまいりましょう。また、私たちや青年会議所にできることには限りがあり、このまちが抱える多くの課題をすべて解決することは到底できません。市民の皆様に私たちの思いを伝え、アクティブ・シチズン(行動する市民)を育成することにより、市民全員でのまちづくりを進めてまいります。
 

良質な情報を読み手に伝えるために

 昨年私たちは創刊以来41年間続いてきた「やっさもっさ新聞」の新聞折り込みを中止するという大きな決断をいたしました。そして、毎月各小中学校に全校配布される「こど もやっさもっさ新聞」と町内回覧板として隔月発行される「やっさもっさ新聞」に発行形態を変更しました。この決断の背景にあったものは、私たちが真に思いを伝えたい世代の情報収集のツールが変化し、新聞折り込みという手法が時代にそぐわなくなりつつあると 感じていたからです。発行当時は新聞やラジオしかなかった情報伝達チャネルですが、現在ではテレビに加えて、インターネットやソーシャル・ネットワーキング・サービスが主流となり、媒体のペーパーレス化も進んでいます。しかし、多様化した情報収集のツールから膨大な情報を容易に収集できるようになった今だからこそ、厳選された良質な情報を、タイムリーに読み手に伝えることの重要性は増しつつあるように感じます。昨年度実施した読者アンケートを分析し、私たちが伝えたい情報と、読み手が知りたい情報をマッチングさせて「子どもやっさもっさ新聞」「やっさもっさ新聞」の紙面の充実に努めてまいります。
 また、効果的な情報発信のためには、トピックの選定と正確な現状把握、そしてそれをわかりやすく表現する能力が欠かせません。市民の皆様に情報を発信することの責任を改めて感じ、発行主体である私たち一人ひとりが情報発信力の向上に努めなければなりません。
 

このまちの未来を担う世代に向けて

 次世代を担う青少年を育てることは、このまちの未来を担う人財を育てることです。社会全体で次世代の人財を育成し、その成長を社会全体で支え喜びあう。これが地域が果た す役割であると考えます。もちろん青少年の育成の主体は家庭であり、学校です。しかし近年の核家族化や地縁的なつながりの希薄化により、それらの機能が十分に果たせていないことが指摘されています。私たちは家庭・学校に次ぐ地域を代表する第三極であるとの自覚を持ち、このまちで暮らす青少年が、より郷土愛を育むことができるよう活動を続けてまいります。
 また、近年は築城450年関連事業として、このまちの見過ごされていた資源に注目し、それを子どもたちに伝えるイベントを開催いたしました。しかし、その他にもまだまだ伝えきれていない魅力がたくさんあります。感受性豊かな子どもたちが、地域特有の伝統や文化を肌で感じることが出来る機会を創出することにより、三原を愛する子どもたちを育成します。そしてこのまちを愛する心を育むことにより、自らまちの将来について考え、行動することが出来る「まちづくりの担い手」の育成に努めてまいります。
 

やっさ祭りのビジョンを語ろう

 このまちのアイデンティティであり、誇りでもあるやっさ祭りも今年で43回目の開催を迎えます。のべ8,000人を超える踊り手による見ごたえ十分なやっさ踊りや、三原の風物詩となった中四国最大級の二尺玉など、もはや、やっさ祭りの無い三原の夏は考えられないと言えるほど、このまちを代表する祭りとなりました。三原青年会議所は「市民総参加の心の触れ合いの場づくり」という設立趣旨に賛同し、第1回より実行委員長を輩出するなど、祭りの運営に深く関わってまいりました。
 順調に成長を続けてきたと思われるこの祭りですが、これまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。第39回以降は従前の花火会場が使用できなくなり、海上の台船から花火の打ち上げを行なっています。また、祭りの運営スタッフ不足解消と市民総参加を目的に、ボランティアスタッフ「やっさサポーター」を募集したり、三原青年会議所のOBによって立ち上げられた「やっさ祭りを支える会」に人的な協力を仰ぎながら、何とか祭りを運営してまいりました。
 とはいえ、2015年は第40回の記念大会であったことや、2017年の築城450年記念事業に向けて、行政や商工会議所等の団体からの関連予算が付いたことから、厳し い中でもここ3年間の間はやっさ祭りに対して少なからず「追い風」が吹いていたことを私たちは認識しておかねばなりません。
 しかし、今年度以降のやっさ祭りに対しては昨年並みの財政支援が得られない可能性が高く、さらには2019年以降、祭りのメイン会場である三原駅前市民広場が行政主導の開発により利用できない恐れがあるなど問題が山積しています。規模の縮小を模索することは簡単ですが、やっさ祭りを楽しみにしている市民や観光客 の期待は年々膨らんできているように感じます。その期待に応えるためにも、私たちは当事者として知恵を出し、汗をかきながら祭り発展に向けてのビジョンを示さなければなりません。
 まちづくり活動と同様に、今後のやっさ祭りに求められるものは持続可能であることです。やっさ祭りをより盛大で、未来永劫続く祭りに成長させるために、過去のやっさ祭りや他市の祭りの成功事例を調査研究することで「これからの時代のやっさ祭り」について協議を続けてまいります。
 

会員拡大を強力に推し進めよう

 青年会議所の運動は人から人へ伝わり、やがてまち全体に浸透します。運動の発信者とそれに共感する同志を増やすことで、私たちの活動はより速いスピードで、より広範囲に伝わります。また、たくさんの同士が集まり、多様性を持った組織で活動をすることによって、様々な価値観を共有し、またある時には違いを受け入れることにより、ひいては私たち自身の成長にもつながります。
 1980年には87名と最大だった三原青年会議所の会員数も減少傾向となり、近年は35名~45名程度で推移しています。人口や事業所の減少等の構造的な問題はあるものの、会員拡大は引き続き最重要課題として捉えなければなりません。
 会員拡大には短期的、長期的な取り組みが必要であると考えます。短期的な取り組みとしては、拡大戦略の抜本的な見直しです。日本全体の青年会議所会員が減少を続けている中でも、拡大に成功しているLOMはあります。旧来の手法にとらわれず、成功事例を研究し、新たな情報を集めることによって、戦略的で先進的な会員拡大を進めてまいります。
 また、長期的な取り組みとしては、私たち一人ひとりが青年会議所活動の「語り部」となることです。会員各自が青年会議所の活動を通じて悩み、学んだことを自分の言葉で伝えることにより、入会候補者にとって青年会議所はより身近に感じられるものとなっていくはずです。そのためにはまずは私たちが多くの経験を積み、人間的に成長を遂げた姿を見せることが会員拡大に直結すると再認識し、自己研鑽に励まなければなりません。
 

会員の能力開発のために

 修練を信条の1つとして掲げている青年会議所では、日々の活動の中で自己成長の機会が多く与えられ、それらを成し遂げることによりメンバーそれぞれが成長を重ねていきま す。そして私たち自身の成長は、地域を変革する原動力となり、このまちの発展にも良い影響をもたらします。
 勘違いしてはならないのは、私たちが修練を重ねる最終目的は、青年会議所活動のためだけではないということです。学びの先にある本当の目的を見据え、地域のリーダーとなる人財を育成するために、より効果的で実践的な研修事業を実施いたします。また、月に1度行なわれる例会は、会員全員に等しく与えられる学びの機会です。主催者側の思いを押し通すのではなく、聞き手の視点から、今青年経済人として求められているテーマを厳選し伝えていくことが重要であると考えます。
 私たちが青年会議所活動を通じて大きく成長し、卓越したリーダーとして成長することはこのまちに対する使命でもあり、快く送り出してくれる職場や家庭への責務でもあります。あらゆる機会をチャンスと捉え、本気で向き合い学ぶことにより、自己の能力開発へとつなげてまいりましょう。まちを変えるにはまず自分が変わらなくてはなりません。
 

中期ビジョンを検証し、よりよい運動を目指す

 私たちは2014年に6回目のビジョン「Direction Toward HAPPINESS―笑顔への道標―」を発表しました。このビジョンにはこの地域が抱える問題や、その解決に向けてこ れからも継続的に取り組みをしなければならない項目について触れられています。まちづくり活動には持続可能性が求められますが、青年会議所活動における単年度制はそれを阻害する要因となる恐れがあります。そのため私たちは中期ビジョンを策定し、進むべき方向を誤らないようにしています。
 ビジョン冊子の裏表紙には2014→2020という数字が刻まれています。ビジョンの「実践」が始まった2015年から数えると、ちょうど中間地点を経過したところに来ています。ビジョンの内容を確実に遂行するためにも、本年度はこのビジョンの中間検証を行なうとともに、2020年に向けて、今一度私たちの運動を再考する機会を設けたいと思います。近年の社会情勢は急激に変化を続けています。ビジョン策定時と現在の時代背景に変化が起きたことにより、課題と取り組みの間にミスマッチが生じている恐れがあります。骨子をずらさず、現状の課題に対して最大限の成果を上げる取り組みを目指すために、全員参加で議論を深めてまいります。
 

広島ブロック大会の開催に向けて

 本年度は三原青年会議所主管による第48回広島ブロック大会がこの地にて開催されます。ブロック大会は広島ブロック協議会の運動の集大成の場であり、併せて主管地である三原の魅力を最大限に発信する絶好の機会です。一人でも多くの青年会議所会員、また市民や県民の皆様にご参加いただけるよう、効果的な広報活動を行なうとともに、魅力的なコンテンツの充実に努めてまいります。
 また、ブロック大会の成功という大きな目標をメンバー全員で共有することにより、LOMの結束力をこれまで以上に高めていきたいと思います。実行委員会を中心にLOMメンバーが一丸となることにより、三原青年会議所らしいブロック大会の実現を目指します。
 

むすびに

 私はこれまでの青年会議所活動の中で様々な良い経験を積むことが出来ました。そしてそれと同じくらいの数の困難に直面し、時には失敗し仲間に迷惑をかけたこともありまし た。くじけそうになったこともありますが、それでもこれまで活動を続けてこられたのは、自らの能力を高め、さらに自分を成長させたいという思いからでした。
 アメリカの心理学者、アブラハム・マズローは人間の欲求を5段階に分け、自己成長を続けることにより階層を登り、欲求を満たすことが出来ると提唱しました。そして最も高次な欲求を「自己実現の欲求」と定義しました。自己実現の欲求とは、自分の資質や能力を引き出し、自らが定めたあるべき姿を求めていく欲求です。それには「人から良く見られたい」などの自我の欲求は完全に排除され、ある種の無償性が含まれています。自己実 現の欲求とは、純粋に自己の成長を求めて努力を重ねる人間にだけ味わえる高度な欲求です。そして青年会議所活動の中には、自己実現の欲求を満たすことが出来るチャンスに多く巡り合うことが出来ます。雑念を振り払い、意志と情熱を持って自らの限界に挑戦してみましょう。そうすれば、きっと今まで味わったことのない自己実現という名の果実を得ることが出来ると確信しています。
 
 最後になりますが、先輩諸兄から脈々と受け継がれてきた歴史の上に今があることに対し最大限の敬意と感謝を申し上げるとともに、この1年間、意志と情熱を持って一般社団法人 三原青年会議所の新たな未来を創造するために邁進する所存です。先輩諸兄並びに会員の皆様の温かいご理解とご支援を賜りますよう心よりお願い申し上げます。